2010.02.21 東方ノベル <<18:00
どうも初投稿となります
※東方projectの2次作品になりますキャラの性格が違ったりどこか違う部分があるかもしれませんがそれでも言いという方は続きからどうぞ
タイトル:呑み比べ -ある春の日のこと-
桜が咲くこの季節、博霊神社では大きな声が響き渡っていた
「おーい、霊夢ーお酒の追加ぁ!」
「ねぇ、ちょっと呑みすぎじゃない?」
「うるさーい!とにかくお酒!」
「もう…パチェに怒られただけだからってそこまで呑まなくたっていいじゃない」
「霊夢なんかに俺の気持ちがわかるかー!」
魔理沙は大声を張り上げて怒鳴ると手のひらをヒラヒラと振ると酒を取りに行って来いと言わんばかりに霊夢を台所に追いやった
「なにやってんのよまったく・・・人の迷惑ぐらい考えなさいよ・・・」と、愚痴をこぼしながら渋々とお酒を取りに行く
そもそも何故こんなことになったかというと、原因は魔理沙の行動によるものである
3時間前・・・・・・
ドタドタと廊下を走る音がどんどんと部屋に近づく
「パチュリイイイイイイイイイイ!」
足音とともに館中に響き渡るほどの大声が聞こえるのがわかる
「来たわね・・・」
パチュリーはベッドから上半身を起こし、横に置いてあった水差しからコップに水を注いだ、そして注いだ水を一気に飲み干す
足音が部屋の扉の前まで来るとその前を通り過ぎ一度止まったかと思うとまた引き返してくる
パチュリーが立ち上がり扉の前まで行き扉を開けようと手をかける…
「どうぞ入っ・・・」
「大丈夫かあああああ!?」
バンッっと大きな音を立てて扉が開かれ声とともに白黒の服を身につけた少女が部屋に入ってくる
「キャッ・・・」
扉に頭をぶつけパチュリーは派手に後ろに飛ばされた
「いたたた・・・」
「おい、パチェ!ちゃんとベッドで寝てなきゃ駄目じゃないか!」
「誰のせいでこんなことになってると思ってるのよ、それにいい加減私の寝室ぐらい覚えたらどうなの?」
「あはは・・・ごめんごめん」
魔理沙は手を伸ばしパチュリーを抱きかかえベッドまで運ぶ
横に寝かせ上から布団をかけてやると魔理沙はベッドの脇に座る
「で、今日は何の用で来たの?」
パチュリーは扉でぶつけた頭を押さえながら言った
「いやパチェが風邪引いたって言うから・・・」
パチュリーが風邪を引いて寝込んだという話を聞いて魔理沙は慌てて紅魔館までやって来たのだった
「お見舞いはいいけどもっと静かにできないのかしら・・・?」
「だってパチェが心配で・・・!」
「えっ・・・」
「俺パチェがいないと駄目なんだ・・・」
「魔理沙・・・」
「俺、お前のことが・・・」
と、魔理沙が言うと同時に後ろから声がする
「そこの魔法使い!パチュリー様から離れなさい!」
十六夜咲夜を先頭にメイドたちが後に続いてぞろぞろとやってくる
「ちっ・・・来やがったか」
「あんたわかってんの?パチュリー様は今ご病気なのよ」
「フンッ、そんなの知ってるさ。でも俺とパチェは病気になんか負けない絆があるんだぜ?」
魔理沙がそういうとパチュリーが顔を赤らめる
「そんなこと関係ないわ!いい加減離れなさい!」
「うるせーPAD長!今いいとこなんだから後にしろ~」
一瞬場の空気が凍りついた
「今なんていったの・・・?」
咲夜は足に付けてるホルスターからナイフを取り出すとそれを握り締め2人の元に歩いていく
「だーかーらーいいとこなんだから後にしろって・・・」
「違うわ・・・その前の言葉よ・・・」
部屋にピリピリとした空気が流れる
それを感じ取ったのか後ろにいたメイドたちは逃げるように部屋から出て行った
「その前?PADちょ・・・・・・あ゛」
魔理沙も自分が言った事の重大さに気がついた
「よく聞こえなかったわ・・・なんて言ったの・・・?」
咲夜は顔の前にナイフを持ち上げるとニコッっと笑った
「パ、パチェ・・・俺、急用を思い出した・・・ま、まぁ元気そうでよかった・・・それじゃ!」
言葉を言い終える前に魔理沙は全力で扉まで走って行く・・・
が、扉の前にフッと影が現れる
「どこへ行くつもり?まだ質問の答えが返ってきてないわよ・・・?」
「ひっ・・・」
魔理沙は後ろに飛んで咲夜との距離を離す
「ちょうどいい機会だわね・・・ここで決着をつけましょうか・・・」
「ちょ、ちょっと待って・・・人間誰しも間違いがあってだな・・・」
魔理沙が言い終わる前にナイフが飛んでくる
ナイフは魔理沙の顔の横をかすめ飛んで行き後ろの壁に突き刺さる
「あなたに拒否権は無いのよ、魔法使いさん?」
「クソッこうなったらやるしか・・・」
「うるさーい!」
魔理沙が振り向くとパチュリーが顔を真っ赤にして息を荒げて立ち上がっていた
「ちょっとは静かにしなさい!弾幕ごっこは外でやりなさい!ちょっとは人のこと考えたらどうなの?こっちは病人なのよ!?」
パチュリーの言う通り熱もあるらしくちょっと怒鳴るだけで息が上がって体もフラフラしている、このまま倒れてしまいそうな勢いだ
「でも・・・」
「二人とも出てって頂戴、早く!」
魔理沙と咲夜の二人は部屋を追い出され声をかけようとしたが
「パチェ・・・」
「私は寝るの!」
と一言、バンッと魔理沙が来たときより大きな音で扉を閉められてしまった
「おーい・・・」
「魔理沙なんて嫌い!」
ゴンッと扉に何かがぶつかる音がした
おそらく水差しを投げられたのだろう
「パチェ・・・」
ショックだったのか魔理沙は目に涙を浮かべ廊下を走って紅魔館を出て行った
「用があるときは呼んでください・・・」
咲夜は扉に向かって一言言い
ふぅ・・・とため息をついて
「やりすぎたわね・・・」
と、言って部屋をあとにした
・・・・・・
そのようなことがあったわけだ
霊夢は酒の瓶を片手に縁側に戻る
「あっはっは、お前サイコー!」
「でしょ?話相手にはちょうどいいでしょ」
ふすまに手をかけるとなにやらわいわい話し声が聞こえる
魔理沙しかいなかったはずの縁側にもう一人小柄な影があるのだが・・・
霊夢は嫌な予感しかしなかった
勢いよくふすまを開けるとそこにいたのは
「やぁ!霊夢久しぶり~!」
「萃香何しに来たのよ・・・」
「いやぁ~、ちょっと酒のにおいがしたんでw」
そう、声の主は伊吹萃香である小柄で可愛らしい容姿をしながら頭にはそれに合わない2本の長い角が伸びている
「酒のにおいがしたじゃないでしょ、あんたが来たら酒がなくなるまで呑むじゃない」
「だいじょーぶ!今回はこれもってきたから」
と萃香は表に行ったかと思うと大きな酒樽を担いで持ってきた
「あんたそれどうしたのよ・・・」
「福引やったら当たった」
「・・・どんな運してんのよ」
「まぁ細かいことは気にしないで~あぁつまみ持ってきてくれる?表においてあるからさ」
「はぁ・・・?」
「いやついでに買ってきたんだよ」
「そんなことを言ってるんじゃなくて・・・」
霊夢は自分でとりにいけといいたかったがどうせ言っても無駄だろうと思いあきらめて取りに行く
「ちょっと待ってなさい」
「やけに素直だねー」
魔理沙が茶化す
「あんたは飲みすぎ、少し押さえなさい」
「へーい」
魔理沙は軽く聞き流すとふたたびコップを持ってお酒を注ぎ始めた
「もう、人の話聞けって・・・」
つまみを取って戻ってくるころには二人でわいわいと盛り上がっている
萃香はまだまだ余裕なのに対して魔理沙はもう大分酔っている
まぁ萃香が一緒ならいいだろうと思って部屋に戻ろうとしたら
魔理沙が萃香のスカートの中に手を突っ込んでいるし
萃香はニコニコ笑いながらお構いなしに酒を呑んでいる
それを見た霊夢は魔理沙のその手を止めに行き少し2人の距離を離す
しかし魔理沙は萃香の服をつかんで離そうとしない
「あぁ~!パチェ~!」
「あっはっは!魔理沙私のことパチュリーと勘違いしてる~」
駄目だこいつら早く何とかしないと・・・霊夢は心の中でそう思って
二人の間に入ってやり過ぎないよう止めに入る
間に座ったら座ったで、酒臭いし飲め飲めと強引に進めてくるので霊夢は少しだけならと思い呑むのに付き合うことにした
酒を飲んでるうちに萃香がこんなことを言い出した
「ちょっと『呑み比べ』しない?」
「はい?あんたとやったら確実に負けるじゃない」
「だからハンデつける」
「どんな?」
内容は樽の1/4を霊夢たちで飲み萃香が樽の半分の酒を飲む
先に全部飲んだほうが罰ゲームで敗者に一つだけ自由に命令できるというもの
「面白そうね、やってやろうじゃない」
「そうこなくっちゃ!」
実際魔理沙はこんな状態なので呑めないだろう戦力は霊夢1人になるのはわかっていた
霊夢は少しお酒には自信があり魔理沙よりは呑める、そう自分の中で胸を張っていた
「さぁ呑むわよ~!」
と意気込んだのはいいが一口飲んで霊夢は叫んだ
「う…な、なにこれ!」
「なにって、お酒だよ?」
「これってアルコール度数いくつ…?」
「えーと…57」
「…え?」
その言葉を聞いて喉と胃に焼けるような熱さが伝わる
「この酒ね"鬼殺し"っていう名前なの、酒好きの鬼を殺すぐらい度数が強いって意味なんだって、だけど私には関係ないけどね~」
萃香は笑うと樽を片手で持ち上げ一気に飲み始めた
「ケホッ…これって…反則じゃない…ゴホッ…」
あまりの熱さにに咳き込み顔を真っ赤にする霊夢
「よーし!俺も飲むぞー!」
倒れていた魔理沙が起き上がり呑み始め、結局は霊夢が魔理沙よりも先に酔いつぶれてしまった
・・・・・・・・・
気がつくと目線の先には見慣れた木目の天井が見えたどうやら寝室にいるようだ
外は暗くいつの間にか霊夢は布団に寝かされていた
「うぅ・・・」
頭を押さえながら布団からはいずり出ると横に魔理沙がいるのに気づいた
布団を投げ出してよだれを口から垂らしている
「うぁぅ…すいませんもう呑めません…」
などと意味のわからない寝言をつぶやいてだらしない格好で寝ていた
フッとふすまの間から月の光が差し込んでぼんやりとだがふすまに小さな影が映る
「萃香~いるの?」
ふすまを開けると萃香が月を見ながら一人で酒を飲んでいた
「あら、起きたの?」
萃香は首から先をこちら側に向けてニコっと笑って見せた
「一番先に潰れた人だったか~」
「うっさい」
「あはは~」
萃香は少し笑うとまた月を眺め始めた
「てかいつまで飲んでるのよ…」
霊夢が少しあきれた声で言うと
「気の済むまで…」
とあっさり返された
ふぅ…と萃香はため息をつくとおもむろに
「月ってなんかいいよねー、寂しそうにぼんやり光っててみんなを照らしてさ…でも、何か見てると暖かくなるって言うか」
「そうだね」
「魔理沙自信から聞いたよパチェにふられてヤケ酒って魔理沙らしくないよね、あぁなるまで飲んじゃってほんと馬鹿だね」
「そうだね」
「うん…」
「…」
「…」
ほんの数秒の沈黙だったしかしその数秒がとてつも長く感じる
このとき萃香は何を思っていたのだろう霊夢はそのどこと無く寂しそうな萃香の顔を見つめていた
すると突然萃香の口が開いたかと思うと
「出てきなよ」
「?」
霊夢はその声が誰にかけられたものなのかわからなかった
「ばれてたの…」
上から何かが降りてきた
「あんたは…」
屋根の上から降りてきたのは咲夜だった
「パチュリー様から伝言よ、ちょっと言い過ぎたわごめんなさい。と魔理沙に伝えるようにと」
「でもなんでここってわかったの?それに使いのメイドに行かせればいいことじゃん」
「家に行ってもいなかったし…いろいろ探し回ってここにいるのを見つけたけどあの様子じゃ…」
「飲んでるとこ見つけて、話すチャンスを伺ってたわけだね」
萃香が冷静に答える
「そして飲み終わったと思ったら寝ちゃったと」
「まったくもってその通りよ」
「気軽に話しかければよかったのに~」
「それじゃ魔理沙がいきり立って弾幕でも飛ばしてきたら収拾つかないでしょ?」
「それもそうだね…」
咲夜は少しうつむいて
「それにパチュリー様を怒らせたのは私の責任でもあるし…」
「はい~そこまで、あんまりウジウジしない、あんたがシャキっとしないとどうするの?せっかくの酒がまずくなる…」
「他人事だと思って…!」
少し萃香の言い方にムカッっとした咲夜が言い萃香に近づいていく
「あんたには関係ないかもしれないけどね、パチュリー様も勢いに任せて言っちゃったって、魔理沙に嫌われたらって落ち込んでるのよ!?」
「別に他人事とは思ってないよ」
「あんたになにがわかるって言うの!?」
どんどん咲夜の口調が荒くなっていく
「なんでも知ってる・・・」
「鬼だからってなめないでよ…!」
間に霊夢が割って入る
「あんた達ちょっとやめなさい!いい加減にしなさいよ!」
「ふん…もういいわ、魔理沙が起きたら伝えておいて…それじゃ」
そう言うと咲夜は空高く飛んでいく
「待ちなさい!ほら萃香謝ってきなさい」
萃香は少し膨れて空を見上げながら
「や~だ」
と一言言ってまた酒を口に含む
「もう、あんたってやつは…」
「…」
「…」
またしばらくの沈黙のあと口を開いたのは萃香だった
「あ、そうだ、まだ罰ゲームやってもらってなかったよね…?」
「何で今その話が出るのよまったく…」
「今思いついたの♪」
萃香はウキウキしながら縁側から下ろした足をプラプラさせている
「で、その罰ゲームって何なの?」
「そうだね…」
萃香は指をクイッと突き出して耳を貸せと合図した
「なによ?」
「いいからいいから」
ごにょごにょと霊夢の耳元で罰ゲームの内容が発表される
「…これが……で……こうで……」
「なによそれ、罰ゲームになってないじゃない」
罰ゲームの内容を聞いた霊夢は思わず笑ってしまった
「ふふっ…まぁいいわこっちだって約束したから受けましょう」
2人の少女はぼんやりと月明かりに照らされて笑いあっていた
3日後・・・・・・・・・
「…咲夜この状況はなに?」
紅魔館の大図書館でそれは起こっていた
「はい、天狗に河童に兎、幽霊もいますね」
「それはわかってるわ…でもなんでここなの…?」
幻想卿中の妖怪たちが一度に集まって大宴会を開いていた
「鬼から受けた罰ゲームだそうです…」
「はぁ…?魔理沙ぁ!」
大声で怒鳴ると、見慣れた帽子がひょっこりと横からパチュリーの目に飛び込んでくる
「呼んだか?」
「なによこれ…」
「いや、このまえ萃香と呑み比べしてさ負け…」
「それはわかってる!」
そうこれが萃香の罰ゲームの内容『みんなで仲良く大宴会を開くから人数集めるように』と
まぁ宴会が好きな萃香なら言いかねない馬鹿げたことだったが霊夢と魔理沙は鬼の考えに賛同することにしたのだった
集まっている妖怪はざっと見積もっても20~30人はいる
パチュリーの眉がピクピクと上下に動いている
「まぁいいじゃないか!静かな図書館が楽しくなってるんだしね。な、みんな!」
魔理沙の掛け声とともに「おー!」と妖怪たちから歓声があがる
「はぁ?何が楽しくなったのよ、それより私の本がむちゃくちゃじゃないの!」
「まぁ細かいことは気にするなそれより今は楽しもうぜ、な?」
「はぁ、まったく…あんたはいつになったらその性格直すのよ…」
「アッハッハ!」
「ふぅ・・・でも、たまにはこういうのもいいかもね」
「だろ?」
そういうと魔理沙はにっこり笑い
「じゃ先にいってるからパチェも来いよー」
そう一言告げると手をふりながら宴会の環の中に入っていった…
「ここで騒がせていいのですか?」
「駄目に決まってるじゃない」
「そうですよね、でも私にも責任ありますし・・・」
「でも楽しいから今日は大目に見ましょう」
「え?」
咲夜は不思議そうな顔をして
「ええ、そうですね」
とニッコリ笑った
「でもこの宴会が終わったら片付け手伝ってもらうわよ?」
「魔理沙達に片付けさせればいいじゃないですか」
「あら、自分にも責任はあるって言ったのは誰だっけ?」
「そうでしたね・・・」
それを聞くとパチュリーもクスクスと笑う
桜の咲く季節紅魔館に楽しそうな声が響き渡る
-終-
いかがでしたか?
最後の終わり方がなんだか味気ない気がしたのですが・・・
でも自分ではいい作品になったかなと思っています
長々と失礼しました
では次の作品に期待していてください
桜が咲くこの季節、博霊神社では大きな声が響き渡っていた
「おーい、霊夢ーお酒の追加ぁ!」
「ねぇ、ちょっと呑みすぎじゃない?」
「うるさーい!とにかくお酒!」
「もう…パチェに怒られただけだからってそこまで呑まなくたっていいじゃない」
「霊夢なんかに俺の気持ちがわかるかー!」
魔理沙は大声を張り上げて怒鳴ると手のひらをヒラヒラと振ると酒を取りに行って来いと言わんばかりに霊夢を台所に追いやった
「なにやってんのよまったく・・・人の迷惑ぐらい考えなさいよ・・・」と、愚痴をこぼしながら渋々とお酒を取りに行く
そもそも何故こんなことになったかというと、原因は魔理沙の行動によるものである
3時間前・・・・・・
ドタドタと廊下を走る音がどんどんと部屋に近づく
「パチュリイイイイイイイイイイ!」
足音とともに館中に響き渡るほどの大声が聞こえるのがわかる
「来たわね・・・」
パチュリーはベッドから上半身を起こし、横に置いてあった水差しからコップに水を注いだ、そして注いだ水を一気に飲み干す
足音が部屋の扉の前まで来るとその前を通り過ぎ一度止まったかと思うとまた引き返してくる
パチュリーが立ち上がり扉の前まで行き扉を開けようと手をかける…
「どうぞ入っ・・・」
「大丈夫かあああああ!?」
バンッっと大きな音を立てて扉が開かれ声とともに白黒の服を身につけた少女が部屋に入ってくる
「キャッ・・・」
扉に頭をぶつけパチュリーは派手に後ろに飛ばされた
「いたたた・・・」
「おい、パチェ!ちゃんとベッドで寝てなきゃ駄目じゃないか!」
「誰のせいでこんなことになってると思ってるのよ、それにいい加減私の寝室ぐらい覚えたらどうなの?」
「あはは・・・ごめんごめん」
魔理沙は手を伸ばしパチュリーを抱きかかえベッドまで運ぶ
横に寝かせ上から布団をかけてやると魔理沙はベッドの脇に座る
「で、今日は何の用で来たの?」
パチュリーは扉でぶつけた頭を押さえながら言った
「いやパチェが風邪引いたって言うから・・・」
パチュリーが風邪を引いて寝込んだという話を聞いて魔理沙は慌てて紅魔館までやって来たのだった
「お見舞いはいいけどもっと静かにできないのかしら・・・?」
「だってパチェが心配で・・・!」
「えっ・・・」
「俺パチェがいないと駄目なんだ・・・」
「魔理沙・・・」
「俺、お前のことが・・・」
と、魔理沙が言うと同時に後ろから声がする
「そこの魔法使い!パチュリー様から離れなさい!」
十六夜咲夜を先頭にメイドたちが後に続いてぞろぞろとやってくる
「ちっ・・・来やがったか」
「あんたわかってんの?パチュリー様は今ご病気なのよ」
「フンッ、そんなの知ってるさ。でも俺とパチェは病気になんか負けない絆があるんだぜ?」
魔理沙がそういうとパチュリーが顔を赤らめる
「そんなこと関係ないわ!いい加減離れなさい!」
「うるせーPAD長!今いいとこなんだから後にしろ~」
一瞬場の空気が凍りついた
「今なんていったの・・・?」
咲夜は足に付けてるホルスターからナイフを取り出すとそれを握り締め2人の元に歩いていく
「だーかーらーいいとこなんだから後にしろって・・・」
「違うわ・・・その前の言葉よ・・・」
部屋にピリピリとした空気が流れる
それを感じ取ったのか後ろにいたメイドたちは逃げるように部屋から出て行った
「その前?PADちょ・・・・・・あ゛」
魔理沙も自分が言った事の重大さに気がついた
「よく聞こえなかったわ・・・なんて言ったの・・・?」
咲夜は顔の前にナイフを持ち上げるとニコッっと笑った
「パ、パチェ・・・俺、急用を思い出した・・・ま、まぁ元気そうでよかった・・・それじゃ!」
言葉を言い終える前に魔理沙は全力で扉まで走って行く・・・
が、扉の前にフッと影が現れる
「どこへ行くつもり?まだ質問の答えが返ってきてないわよ・・・?」
「ひっ・・・」
魔理沙は後ろに飛んで咲夜との距離を離す
「ちょうどいい機会だわね・・・ここで決着をつけましょうか・・・」
「ちょ、ちょっと待って・・・人間誰しも間違いがあってだな・・・」
魔理沙が言い終わる前にナイフが飛んでくる
ナイフは魔理沙の顔の横をかすめ飛んで行き後ろの壁に突き刺さる
「あなたに拒否権は無いのよ、魔法使いさん?」
「クソッこうなったらやるしか・・・」
「うるさーい!」
魔理沙が振り向くとパチュリーが顔を真っ赤にして息を荒げて立ち上がっていた
「ちょっとは静かにしなさい!弾幕ごっこは外でやりなさい!ちょっとは人のこと考えたらどうなの?こっちは病人なのよ!?」
パチュリーの言う通り熱もあるらしくちょっと怒鳴るだけで息が上がって体もフラフラしている、このまま倒れてしまいそうな勢いだ
「でも・・・」
「二人とも出てって頂戴、早く!」
魔理沙と咲夜の二人は部屋を追い出され声をかけようとしたが
「パチェ・・・」
「私は寝るの!」
と一言、バンッと魔理沙が来たときより大きな音で扉を閉められてしまった
「おーい・・・」
「魔理沙なんて嫌い!」
ゴンッと扉に何かがぶつかる音がした
おそらく水差しを投げられたのだろう
「パチェ・・・」
ショックだったのか魔理沙は目に涙を浮かべ廊下を走って紅魔館を出て行った
「用があるときは呼んでください・・・」
咲夜は扉に向かって一言言い
ふぅ・・・とため息をついて
「やりすぎたわね・・・」
と、言って部屋をあとにした
・・・・・・
そのようなことがあったわけだ
霊夢は酒の瓶を片手に縁側に戻る
「あっはっは、お前サイコー!」
「でしょ?話相手にはちょうどいいでしょ」
ふすまに手をかけるとなにやらわいわい話し声が聞こえる
魔理沙しかいなかったはずの縁側にもう一人小柄な影があるのだが・・・
霊夢は嫌な予感しかしなかった
勢いよくふすまを開けるとそこにいたのは
「やぁ!霊夢久しぶり~!」
「萃香何しに来たのよ・・・」
「いやぁ~、ちょっと酒のにおいがしたんでw」
そう、声の主は伊吹萃香である小柄で可愛らしい容姿をしながら頭にはそれに合わない2本の長い角が伸びている
「酒のにおいがしたじゃないでしょ、あんたが来たら酒がなくなるまで呑むじゃない」
「だいじょーぶ!今回はこれもってきたから」
と萃香は表に行ったかと思うと大きな酒樽を担いで持ってきた
「あんたそれどうしたのよ・・・」
「福引やったら当たった」
「・・・どんな運してんのよ」
「まぁ細かいことは気にしないで~あぁつまみ持ってきてくれる?表においてあるからさ」
「はぁ・・・?」
「いやついでに買ってきたんだよ」
「そんなことを言ってるんじゃなくて・・・」
霊夢は自分でとりにいけといいたかったがどうせ言っても無駄だろうと思いあきらめて取りに行く
「ちょっと待ってなさい」
「やけに素直だねー」
魔理沙が茶化す
「あんたは飲みすぎ、少し押さえなさい」
「へーい」
魔理沙は軽く聞き流すとふたたびコップを持ってお酒を注ぎ始めた
「もう、人の話聞けって・・・」
つまみを取って戻ってくるころには二人でわいわいと盛り上がっている
萃香はまだまだ余裕なのに対して魔理沙はもう大分酔っている
まぁ萃香が一緒ならいいだろうと思って部屋に戻ろうとしたら
魔理沙が萃香のスカートの中に手を突っ込んでいるし
萃香はニコニコ笑いながらお構いなしに酒を呑んでいる
それを見た霊夢は魔理沙のその手を止めに行き少し2人の距離を離す
しかし魔理沙は萃香の服をつかんで離そうとしない
「あぁ~!パチェ~!」
「あっはっは!魔理沙私のことパチュリーと勘違いしてる~」
駄目だこいつら早く何とかしないと・・・霊夢は心の中でそう思って
二人の間に入ってやり過ぎないよう止めに入る
間に座ったら座ったで、酒臭いし飲め飲めと強引に進めてくるので霊夢は少しだけならと思い呑むのに付き合うことにした
酒を飲んでるうちに萃香がこんなことを言い出した
「ちょっと『呑み比べ』しない?」
「はい?あんたとやったら確実に負けるじゃない」
「だからハンデつける」
「どんな?」
内容は樽の1/4を霊夢たちで飲み萃香が樽の半分の酒を飲む
先に全部飲んだほうが罰ゲームで敗者に一つだけ自由に命令できるというもの
「面白そうね、やってやろうじゃない」
「そうこなくっちゃ!」
実際魔理沙はこんな状態なので呑めないだろう戦力は霊夢1人になるのはわかっていた
霊夢は少しお酒には自信があり魔理沙よりは呑める、そう自分の中で胸を張っていた
「さぁ呑むわよ~!」
と意気込んだのはいいが一口飲んで霊夢は叫んだ
「う…な、なにこれ!」
「なにって、お酒だよ?」
「これってアルコール度数いくつ…?」
「えーと…57」
「…え?」
その言葉を聞いて喉と胃に焼けるような熱さが伝わる
「この酒ね"鬼殺し"っていう名前なの、酒好きの鬼を殺すぐらい度数が強いって意味なんだって、だけど私には関係ないけどね~」
萃香は笑うと樽を片手で持ち上げ一気に飲み始めた
「ケホッ…これって…反則じゃない…ゴホッ…」
あまりの熱さにに咳き込み顔を真っ赤にする霊夢
「よーし!俺も飲むぞー!」
倒れていた魔理沙が起き上がり呑み始め、結局は霊夢が魔理沙よりも先に酔いつぶれてしまった
・・・・・・・・・
気がつくと目線の先には見慣れた木目の天井が見えたどうやら寝室にいるようだ
外は暗くいつの間にか霊夢は布団に寝かされていた
「うぅ・・・」
頭を押さえながら布団からはいずり出ると横に魔理沙がいるのに気づいた
布団を投げ出してよだれを口から垂らしている
「うぁぅ…すいませんもう呑めません…」
などと意味のわからない寝言をつぶやいてだらしない格好で寝ていた
フッとふすまの間から月の光が差し込んでぼんやりとだがふすまに小さな影が映る
「萃香~いるの?」
ふすまを開けると萃香が月を見ながら一人で酒を飲んでいた
「あら、起きたの?」
萃香は首から先をこちら側に向けてニコっと笑って見せた
「一番先に潰れた人だったか~」
「うっさい」
「あはは~」
萃香は少し笑うとまた月を眺め始めた
「てかいつまで飲んでるのよ…」
霊夢が少しあきれた声で言うと
「気の済むまで…」
とあっさり返された
ふぅ…と萃香はため息をつくとおもむろに
「月ってなんかいいよねー、寂しそうにぼんやり光っててみんなを照らしてさ…でも、何か見てると暖かくなるって言うか」
「そうだね」
「魔理沙自信から聞いたよパチェにふられてヤケ酒って魔理沙らしくないよね、あぁなるまで飲んじゃってほんと馬鹿だね」
「そうだね」
「うん…」
「…」
「…」
ほんの数秒の沈黙だったしかしその数秒がとてつも長く感じる
このとき萃香は何を思っていたのだろう霊夢はそのどこと無く寂しそうな萃香の顔を見つめていた
すると突然萃香の口が開いたかと思うと
「出てきなよ」
「?」
霊夢はその声が誰にかけられたものなのかわからなかった
「ばれてたの…」
上から何かが降りてきた
「あんたは…」
屋根の上から降りてきたのは咲夜だった
「パチュリー様から伝言よ、ちょっと言い過ぎたわごめんなさい。と魔理沙に伝えるようにと」
「でもなんでここってわかったの?それに使いのメイドに行かせればいいことじゃん」
「家に行ってもいなかったし…いろいろ探し回ってここにいるのを見つけたけどあの様子じゃ…」
「飲んでるとこ見つけて、話すチャンスを伺ってたわけだね」
萃香が冷静に答える
「そして飲み終わったと思ったら寝ちゃったと」
「まったくもってその通りよ」
「気軽に話しかければよかったのに~」
「それじゃ魔理沙がいきり立って弾幕でも飛ばしてきたら収拾つかないでしょ?」
「それもそうだね…」
咲夜は少しうつむいて
「それにパチュリー様を怒らせたのは私の責任でもあるし…」
「はい~そこまで、あんまりウジウジしない、あんたがシャキっとしないとどうするの?せっかくの酒がまずくなる…」
「他人事だと思って…!」
少し萃香の言い方にムカッっとした咲夜が言い萃香に近づいていく
「あんたには関係ないかもしれないけどね、パチュリー様も勢いに任せて言っちゃったって、魔理沙に嫌われたらって落ち込んでるのよ!?」
「別に他人事とは思ってないよ」
「あんたになにがわかるって言うの!?」
どんどん咲夜の口調が荒くなっていく
「なんでも知ってる・・・」
「鬼だからってなめないでよ…!」
間に霊夢が割って入る
「あんた達ちょっとやめなさい!いい加減にしなさいよ!」
「ふん…もういいわ、魔理沙が起きたら伝えておいて…それじゃ」
そう言うと咲夜は空高く飛んでいく
「待ちなさい!ほら萃香謝ってきなさい」
萃香は少し膨れて空を見上げながら
「や~だ」
と一言言ってまた酒を口に含む
「もう、あんたってやつは…」
「…」
「…」
またしばらくの沈黙のあと口を開いたのは萃香だった
「あ、そうだ、まだ罰ゲームやってもらってなかったよね…?」
「何で今その話が出るのよまったく…」
「今思いついたの♪」
萃香はウキウキしながら縁側から下ろした足をプラプラさせている
「で、その罰ゲームって何なの?」
「そうだね…」
萃香は指をクイッと突き出して耳を貸せと合図した
「なによ?」
「いいからいいから」
ごにょごにょと霊夢の耳元で罰ゲームの内容が発表される
「…これが……で……こうで……」
「なによそれ、罰ゲームになってないじゃない」
罰ゲームの内容を聞いた霊夢は思わず笑ってしまった
「ふふっ…まぁいいわこっちだって約束したから受けましょう」
2人の少女はぼんやりと月明かりに照らされて笑いあっていた
3日後・・・・・・・・・
「…咲夜この状況はなに?」
紅魔館の大図書館でそれは起こっていた
「はい、天狗に河童に兎、幽霊もいますね」
「それはわかってるわ…でもなんでここなの…?」
幻想卿中の妖怪たちが一度に集まって大宴会を開いていた
「鬼から受けた罰ゲームだそうです…」
「はぁ…?魔理沙ぁ!」
大声で怒鳴ると、見慣れた帽子がひょっこりと横からパチュリーの目に飛び込んでくる
「呼んだか?」
「なによこれ…」
「いや、このまえ萃香と呑み比べしてさ負け…」
「それはわかってる!」
そうこれが萃香の罰ゲームの内容『みんなで仲良く大宴会を開くから人数集めるように』と
まぁ宴会が好きな萃香なら言いかねない馬鹿げたことだったが霊夢と魔理沙は鬼の考えに賛同することにしたのだった
集まっている妖怪はざっと見積もっても20~30人はいる
パチュリーの眉がピクピクと上下に動いている
「まぁいいじゃないか!静かな図書館が楽しくなってるんだしね。な、みんな!」
魔理沙の掛け声とともに「おー!」と妖怪たちから歓声があがる
「はぁ?何が楽しくなったのよ、それより私の本がむちゃくちゃじゃないの!」
「まぁ細かいことは気にするなそれより今は楽しもうぜ、な?」
「はぁ、まったく…あんたはいつになったらその性格直すのよ…」
「アッハッハ!」
「ふぅ・・・でも、たまにはこういうのもいいかもね」
「だろ?」
そういうと魔理沙はにっこり笑い
「じゃ先にいってるからパチェも来いよー」
そう一言告げると手をふりながら宴会の環の中に入っていった…
「ここで騒がせていいのですか?」
「駄目に決まってるじゃない」
「そうですよね、でも私にも責任ありますし・・・」
「でも楽しいから今日は大目に見ましょう」
「え?」
咲夜は不思議そうな顔をして
「ええ、そうですね」
とニッコリ笑った
「でもこの宴会が終わったら片付け手伝ってもらうわよ?」
「魔理沙達に片付けさせればいいじゃないですか」
「あら、自分にも責任はあるって言ったのは誰だっけ?」
「そうでしたね・・・」
それを聞くとパチュリーもクスクスと笑う
桜の咲く季節紅魔館に楽しそうな声が響き渡る
-終-
いかがでしたか?
最後の終わり方がなんだか味気ない気がしたのですが・・・
でも自分ではいい作品になったかなと思っています
長々と失礼しました
では次の作品に期待していてください